ウクライナ難民人道支援基金設立にあたって


獨協医科大学国際疫学研究室福島分室 
室長 木村真三 
 

背景:
 1999年よりチェルノブイリ事故後影響の研究を着手、翌年ウクライナ訪問を行い、現地の研究者はもとより、高濃度汚染地域に暮らす住民、チェルノブイリ立ち入り禁止区域内に違法に暮らす住民達への食料・医薬品の支援を行っています。
 不幸なことにロシア軍がウクライナに侵攻してからというもの、現地の友人達とも連絡を取っているが、戦火が首都キエフに迫ってきたことからシェルターにいる時間が多く、返事が滞るようになってきました。
 このような中、日本から何が支援できるか考え、すぐさま行動に出たのが、首相、外務大臣、外務大臣経験者への接触を図り、ウクライナ人を難民認定し、日本で受け入れることを思いつき、懇意の国会議員や政治部記者などを通じ、一刻も早く、受け入れ態勢を整えるよう努力しているが、なかなか私の声は中央政府に届きませんでした。ようやく、私の代理人が外務事務次官と2月最終週に会うことになり、私以外に同じことを考えられていた方もたくさんいたのでしょうが、3月2日夕方、岸田首相が難民認定するとの報道が流れたので、これからの活動は受け入れが中心となります。

 現在、ウクライナではチェルノブイリ原発を軍が掌握し、キエフの北側まで侵攻してきたと報じています。また、ロシア軍は病院、幼稚園、救急車なども攻撃、殺傷の力の高い燃料気化爆弾、クラスター爆弾の使用も報じられ、あるまじき行為を続けています。
 2月28日ロシアのインターファクス通信によると、ショイグ国防相はプーチン大統領に対し「戦略ミサイル部隊、北部・太平洋艦隊、長距離航空部隊の司令部が人員を増強して戦闘任務を遂行し始めた」と報告しており、核の使用への緊張が高まっています。
また、3月4日には、ウクライナ南部にあるザポリージャ原発に向け全方向の攻撃が行われ、あわや大惨事となるところでした。ロシアは、全世界に向けてウクライナに対する強い意思を示した形となりました。ウクライナとの戦闘状態が長引けば長引くほど、ロシアは強硬な手段を使ってくることになるでしょう。そのため、一刻も早く、できるだけ多くの国民を戦火の及ばない国外へ脱出させることが急務です。遠く日本からの支援としては、あまりにも脆弱かもしれません。しかし、何もできないで指をくわえて見ていることもできないので、できるところからの支援をしたいと考えました。

木村とウクライナのつながり
チェルノブイリ原発事故被災地のウクライナにおける住民の健康調査・研究の功績から、2013年ジトーミル国立農業生態学大学(現ポレーシェ大学)より名誉教授号、また、2017年ウクライナ医学アカデミー マルゼーエフ記念公衆衛生研究所から名誉博士号を授与。
また、ウクライナ国ジトーミル州ナロージチ地区の統合地域共同体長レオンチュク・アナトーリイ・オレクサンドロヴィチ氏からウクライナ建国25周年記念勲章を叙勲。叙勲理由は、チェルノブイリ原発事故の被災地であり高濃度汚染地域のナロージチ地区において住民への放射線被ばく管理に貢献した結果である

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。